カタコトコラム

全力の感謝と尊敬の記憶

フィットネスクラブでダンススクールを運営する私が、感謝してやまない方々がいます。

先生と家族、生徒と保護者の皆様、取引先・店舗スタッフの皆様、イベントスタッフの皆様など、多くの方に支えられて活動ができていることに、心から感謝しています。

 

今回は、その中の一人について、お話しさせてください。

主役は、店舗スタッフの、Kさんという女性トレーナーの方です。

Kさんは、仕事の全てを全力で表現してくれる、まさに接客のエキスパートです。

トレーニングの指導が上手で、フロントでも抜群の笑顔を見せてくれ、子どもにはとても優しく接してくれました。

カジュアルなのに丁寧で、思いやりにあふれ、極めて快活に仕事ができて、気配り上手、天真爛漫で繊細な、本当に素敵な方でした。

弓道の心得があり、「ダイエットアドバイザー」「シェイプアップインストラクター」の資格も、お持ちでした。

 

さいたま新都心のお店で、2025年6月頃から2026年の春頃まで、ご一緒しました。

私は週2回のダンススクールの代表、Kさんは取引先のスタッフとして。

Kさんについて、私は当初「とてもよく気がついてくれる方だな」という印象を持っていました。

ただ歩いているだけの時間が非常に少なく、まっすぐ歩いていることさえも珍しいくらいに、こまめな気配りにあふれたお仕事をされていたからです。

 

Kさんの入店から半年ほど経った、2026年1月頃だったでしょうか。

私は勇気を出して、Kさんに話しかけてみました。

私も弓が好きで、弓道に関心がありましたので、弓道体験での出来事を、相談しました。

初めて話したKさんは、とてもコミュニケーションが上手で、私は嬉しくなりました。

会話の中で「あ、大阪弁が出てしまった・・」という可愛らしい一節があり、大阪出身の私は「大阪から幹部の人が応援に来てくれたのかな」と思いました。

 

この日を境に、Kさんは私に話しかけてくれるようになりました。

内容こそ「くじ引きいかがですか?」などの営業トークなのですが、声かけのセンスが抜群でした。

Kさんの声かけは、私が唐突にフロントの前を通り過ぎる、わずか数秒の間に、完璧なタイミング、キャッチーなワード、快活な声で、キレ良く表現してくれたのです。

この優れた瞬発力は、高い集中力を保って仕事をしている人だけができる接客技術です。価値をわかりやすく提案できて、仕事への意欲も高い方だなと思いました。

特に「新しい機械入りました!」の声かけが印象に残っています。券売機がキャッシュレスになったことを端的に伝えてくれたもので、私に教えてくれたのは、スタッフの中でKさんだけでした。本当にありがたかったです。

 

そんなある日、Kさんがお客様のトレーニングをサポートするお姿を拝見して、私は衝撃を受けました。

トレーニング指導が、めちゃくちゃ上手な方だな!」と。 

店内の女性用エリア付近で、トレーニングのサポートを実技付きで超わかりやすく丁寧に指導されていました。

ただやって見せるだけでなく、表情や声や言葉遣いなど、全身で思いやりを表現しているようでした。

Kさんにサポートされた方は、みんなトレーニングが好きになるような、基本に忠実で理想的な教え方でした。

 

しばらくして、Kさんがフロントで受付対応をされているお姿を拝見しました。

フロントでの振る舞いも完璧で、元気いっぱいの満面の笑顔で、お客様を迎えてくれていました。

スクールの子ども達には、まるで幼稚園の先生のように、とても優しく接してくれていました。

あんなふうに対応してもらえたら、お客様も子ども達も、きっとみんな幸せな気持ちになると思いました。

トレーナーとフロントの両方で、これほど質の高い仕事ができる方には、なかなか出会えません。

Kさんは、一般のお客様が求める技術の全てを持っていらっしゃいました。

お店と私のスクールの発展に、Kさんは絶対に必要な方だと強く思いました。

 

私は、たいへん感動して、「Kさん、めちゃくちゃ仕事できますね!」と、勢い余ってお伝えしました。

するとKさんは「何にもできないのが売りで・・」と、少し照れたように笑っていました。

私が「20年くらいお世話になってるけど、こんなに仕事できる人いないですよ!」と返すと

Kさんは「ほんとですか?!」と、嬉しそうにしてくれました。

私が「接客が神です。あと、細かいところにもめちゃくちゃよく気がついてくれます。」と伝えると

Kさんは「モチベ上がります」と、視線を落として落ち着いた感じで言いました。この言葉だけは、なぜか本音ではない印象を受けました。

 

ある火曜日、ラウンジにいた私は、店内がとても良い雰囲気になるのを感じました。

お店の中なのに、森の中でくつろいでいるような、不思議な気分になったのです。

導かれるようにフロントに行くと、Kさんが高く澄んだ声と素敵な笑顔で接客をしていました。

お店の雰囲気を作るほど、とても綺麗で大きなエネルギーで接客する方だなと、改めて感心しました。

 

しばらくして、Kさんは私にも、元気に挨拶してくれるようになりました。

「こんにちは~!うふふっ」と、心から嬉しそうに挨拶してくれて、楽しさの表現力が突き抜けていました。

クリーンスタッフが帰った後に、多目的トイレを掃除してくれているのもKさんでした。

私が「感謝を伝えたい!」と思ってお手洗いに近づくと、すでにKさんはいなくなっていて、室内がピカピカになっていました。

すれ違いざまに「服かわいいですね♪キラキラしてる~☆」と、天真爛漫な笑顔で、私の洋服を褒めてくれることもありました。

この時の私は、どうしてこんなにも良くしてくれるんだろうと、深い感謝と尊敬の気持ちに包まれましたが、それだけではありませんでした。

この洋服は、15年ほど前にダンスの衣装として先生が作ってくれたもので、ミュージカル映画の「RENT」をイメージした、愛と痛み、様々な感情の詰まったアート性の高いものだったのです。

私は経験上「この洋服に反応する人は、感受性が高く、繊細な方が多い」ことを知っていました。

ですから、極めて快活に見えるKさんに、私は「ありがとうございます」と、一言返事をするのが精一杯でした。

そして私は、私の中で、グッと気を引き締め直しました。

 

よく見ると、仕事中は歩く太陽のように輝いていたKさんが、休憩になると猫背になって、ゆっくり歩くことが増えていました。

休憩に入った後も、人が足りない時は小走りでフロント対応をされているお姿を見かけたこともありました。

私は、Kさんの接客のエネルギーの綺麗さや、トレーニング指導の上手さについて、お声がけするか迷いました。

しかし、「エネルギーなんて言ったら、怖がらせてしまうかな?」「どう言ったら上手く伝えられるんだろう」などと考えてしまいました。 

そして、「もし休憩中に話しかけたら、全く休めなくなってしまうのではないか」などと思い、見守ってしまいました。

 

Kさんが1人でフロントにいらした、ある日のこと。

フロントに、何やらよくない言葉を投げて立ち去っていったお客様がいました。

そのお客様を追いかけてフォローしたい気持ちと、フロントを離れられない状況の狭間で、Kさんは右往左往していました。

私は「もし私がフロントをできたら、Kさんを助けられるのに…」と、自分の立場と無力さを感じていました。

同時に、「大丈夫ですか?Kさんは何一つ悪くないです。気にしないでくださいね」の言葉が頭をよぎりましたが、Kさんに伝えることはできませんでした。

私は、「Kさんには感情の全てを言葉にして伝えていいんだ」と思い始めていましたが、まだ確信を持てずにいました。

お互いの立場、仕事上の距離感、周囲との関係などから、大切なKさんとの接し方を丁寧に考えていたからです。

 

2月の最後の週に、私は大きな過ちを犯します。

スクールの体験日に、Kさんがフロントにいらしたので、私は体験の予約をお伝えしに行きました。

私が「Kさん」と声をかけると、Kさんは振り向きざまに、再びあの洋服を「服かわいいですね!」と言ってくれました。いつもより少し早口で、凛々しい表情で。

私は、その返事で「今日体験なので・・」と伝えてしまいました。

するとKさんは、一瞬がっくりとうなだれ、すぐに気持ちを切り替えたように見えました。

Kさんの表情の変化に気づきながらも、私は体験のことで頭がいっぱいになり、Kさんを気遣う余裕がなくなっていました。

当時の私は、体験の確認の他にも、3人のお客様とメール対応を行なっていました。

また、体験の予約は事前に共有していましたので、ごく簡単な確認だけを行うつもりでいました。

Kさんは、わずかな時間でも気配りをくれる、本当に素敵で思いやりあふれる方です。

一方、私は「Kさんがいてくれて嬉しい!」という気持ちを、全く表現できませんでした。

どんなに忙しくても気配りを忘れないKさんのように、人の心に寄り添う丁寧な仕事ができなかった、私の未熟さを悔やんでいます。

そして何より、Kさんを気落ちさせてしまったことが、今でも心残りです。

本来であれば、「Kさんも、トレーニングのサポートがめちゃくちゃ上手なのに、フロントもできて、本当にすごいですね!いつもありがとうございます!」などと、日頃からの感謝と尊敬の気持ちをきちんとお伝えしてから、予約の確認に入るべきでした。

 

直後に体験のお客様がお見えになり、Kさんは最高の対応をしてくれました。

私が退店する時も、Kさんはフロントにいらして、最高の笑顔と澄みきった声で「ハイッ!」と、名刺ほどの大きさの駐車券を、両手で私に差し出してくれました。

本当にプロの鏡のような対応です。

丸みのあるショートボブの襟足を少しだけ結んだ髪型も、とってもよくお似合いでした。

 

帰宅した私は、この体験での失敗を機に、尊敬するKさんの仕事ぶりについて、周囲にきちんと理解を得たいという気持ちになりました。

そこで私は、まず家族と先生に「店舗に、めちゃくちゃ仕事できる人がいて、すっごく感謝してる!」という話をしました。

先生は「あの子、仕事はできるけどメンタルが繊細だから、持つかわからないよ?」とおっしゃってくれましたが、私は「あれだけ気配りしてれば、相当疲れるだろう」と受け流してしまいました。

翌週の月曜日には、Kさんの所属する会社の幹部とミーティングをする予定がありましたので、私はそのミーティングでも感謝を伝えられるよう、準備をしました。

 

体験から2日後の木曜日。

レッスン前に先生に「体験の時にKさんを傷つけてしまったかも知れない」と伝え、励ましの言葉もいただいていました。

幸い、店内でKさんをお見かけするチャンスがありました。

お見かけしたKさんは、仕事中なのに、元気がないように見えました。

私は「Kさん、今から休憩かな?」と思ってしまい、すれ違いざまに一言挨拶しただけでした。

 

体験から6日後の月曜日。

取引先の経営陣・幹部とのミーティングの中で、私はKさんの名前を伏せたまま、あふれる感謝を繰り返しお伝えしました。

 

体験から1週間。

Kさんの所属する取引先にも気持ちを伝えた私は「今日からKさんに感謝を伝えよう!」と思い、店舗に伺いました。

すると、Kさんはもういませんでした。

 

 

 

 

 

Kさん

私は、Kさんのお仕事に取り組む姿勢から、たくさんの大切なことを教えていただきました。

本当に、ありがとうございます。

Kさんの仕事は、思いやりと表現力で満たされています。

きっと、お人柄そのものが、とても素敵だからだと思います。

おかげさまで、私には夢ができました。

いつかお会いできた時に、お伝えできたら嬉しいです。

 

いつも全力で表現してくれる、正直なKさん。

Kさんが「楽しいな♪ 嬉しいな♪」と感じられる日々が続くことを願っています。

元気な時も、元気でない時も、いつも幸せを祈っています。

心からの感謝を込めて。

 

 

 

読者の皆様、最後までお読みいただき、ありがとうございます。

私が皆様の一人ひとりにお伝えしたいことは、「感謝は、こまめに伝えてほしい」ということです。

私は今も、「Kさんにもっと感謝を伝えたかった」という心残りを抱えています。

当時、どう表現していいかわからないくらいに、私はKさんの仕事が大好きで、感謝と尊敬の気持ちに包まれていました。今も、その気持ちは変わりません。

だからこそ、皆様にも感謝を伝えたい人がいるのなら、今すぐに伝えてみてほしいです。

上手に伝えられなくてもいい。不器用でもいい。感謝を伝えることそのものが大切なんです。

ぜひ、本人に伝えられるうちに、精一杯の感謝を、こまめに伝えていただけたら、嬉しいです。

もし、世界中の人々がこまめな感謝を伝えていたら、今よりもっと素敵な世の中になると思います。

身近な人への感謝を、こまめに伝えることを、ここから一緒に表現していきましょう。

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